リラタイム

伴侶動物たちの病気季節の変わり目に気をつけたいこと

ペット

我が国においても、伴侶動物とともに暮らす人の数が増えています。
季節の変わり目に気をつけてほしい、伴侶動物の病気について解説します。

[解説]東京農工大学 農学部獣医学科
比較動物医学研究室 教授 田中あかね(獣医学博士)

皮膚のアレルギー

イヌはヒトと同様にアレルギー性皮膚炎を自然発症することが知られています。代表的なイヌの皮膚アレルギーであるアトピー性皮膚炎は、主として若い頃から発症します。多くの場合、発症初期には季節性を示しますが、その後症状が進行するにつれて季節性は消失し、激しい痒みを伴う慢性皮膚炎に移行することがあります。これは、家ダニや花粉などのアレルゲンに対する過剰な免疫反応の結果で、人と同様に環境因子が関係していると考えられます。ネコにおいてもアトピー性皮膚炎にきわめて類似した病態が認められる場合があります。イヌやネコといった伴侶動物のアレルギーは、いずれも人と同様に家ダニ、花粉、食物などが発症要因とされていますので、こまめな掃除、散歩コースの検討や散歩後のケア、フードの選択などが重要です。適度なブラッシングで散歩後に花粉を払い落とす事は重要ですが、シャンプーのしすぎは逆に重要な皮膚バリアを破壊することとなります。シャンプーは2週間に1回程度が適切です。

呼吸器のアレルギー

イヌやネコにおける呼吸器系のアレルギーとして喘息(アレルギー性気管支炎)が知られており、イヌでは極めて稀ですが、ネコは約200匹に1匹程度の割合で発症すると言われています。ネコの喘息はほとんどの場合空気中のアレルゲンによって引き起こされます。イヌやネコも、ヒトと同様に花粉に対してアレルギー反応を起こすことが知られています。ただ、ヒトと異なりイヌやネコにおける花粉アレルギーは鼻汁・くしゃみなどの呼吸器症状よりもむしろ口や眼周囲、耳や四肢の先端部などの痒みを呈することが多く、これら症状がアトピー性皮膚炎などの慢性皮膚炎症とも関連して重篤な皮膚症状悪化に至る例もあります。こまめな換気が励行されていますので、空気清浄機やレースのカーテンなどを有効に使って、花粉対策をしましょう。

温度変化に伴う管理の注意

季節の変わり目など、気温の変化に伴う疾患には注意が必要です。イヌのフィラリア症は、昼間の平均気温が23度を超えるようになると、蚊による媒介が進みます。蚊の多い地域では、5月を目処に予防を始め、11月いっぱいまでは続けましょう。また、熱中症にも注意が必要です。熱中症というと夏の病気と思われるかもしれませんが、まだ体が暑さに慣れていない春が一番危険です。長毛種や短頭種、濃い毛色のイヌでは、特に注意が必要です。熱中症は、数日かけて徐々に悪化することがあります。開口呼吸、体温の上昇、口腔の色が濃くなるなどの異常が認められたら、すぐに獣医師に相談してください。イヌは人に比べ快適気温が低くなっています。レジャーで海や山に連れて行く場合には、たとえ春先であっても、十分な暑さ対策とこまめな給水が必要です。さらに、夏には地面の温度が上昇しますので、夕方の散歩であっても、足裏の火傷に注意が必要です。気温の高い時期は、散歩に出る前に、地面の温度を確認してください。地面を裸足で歩くイヌやネコにとって、毎日少しずつ足裏の損傷が積み重なると、歩けなくなるほどの火傷に陥る場合があります。散歩は、まだ地面の温度が上昇する前の朝の時間帯をお勧めします。夕方や夜の散歩は、熱中症や足裏火傷のリスクがあります。また、気温の上がる車内に、イヌやネコを決して放置しないように注意してください。寒い時期には、コタツやホットカーペットにも注意が必要です。コタツ内での熱中症や、ホットカーペットでの低温やけどにも十分注意してください。

思わぬ病気や怪我に気をつけて、楽しい時間を共にお過ごしください。