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健康セミナー/2012年健康オープンカレッジ (野村 忍 氏)

こころとからだの健康

4月20日金曜日、フォーデイズ東京サロンにて、 健康オープンカッレジが開催されました。
健康の定義は、疾病がないというだけではなく、「身体的、精神的、社会的に良好な状態」であるとされています。
複雑多様化した現代ストレス社会の中で、心と体の健康を維持し、元気な生活を送るために必要なことを、心療内科を専門とする野村忍先生に講演いただきました。自分にあったストレス解消法を見つけ出すきっかけになった参加者の方も多いのではないでしょうか。


健康目標を定めよう


seminar10_img_02.jpg 体の健康を考えると、快食、快便、快眠といった状態を保てると良いと思います。
 食事をおいしく食べられるというのが快食です。食欲がなかったり、暴飲暴食をして胃腸を壊したり、若い女性ですと、ダイエットから過食症になったりといったことにはならないように、食には十分気をつけてほしいと思います。
 快便ですが、便秘になったり、逆にゆるくなったりといった状態ではなく、良い便がすっきりと出るというのが健康の目安になりますので、皆様も毎日チェックしてみてください。
 また快眠ですが、これもよく眠れて、すっきりと起きるという状態になるといいですね。ストレスなどで眠れない、あるいは悪夢で起こされる、朝から疲れているなどの症状があるのはよくありません。
 自分なりの基準で、好調な状態を「健康目標」と名づけて維持していくことが大切ですが、体調をくずしたときには、元の状態に戻すように少しずつ努力していく、という姿勢が大事だと思います。自分にあったやり方で、自分のできることを、ひとつずつ積み上げていきましょう。
 健康目標を定めるにあたって、健康アドバイザーのように相談できる方がいると良いですね。例えばジムに通っている場合、自分の能力に適したプログラムを、インストラクターの方に作ってもらうのはいかがでしょうか。


心の病が体の病につながる


seminar10_img_03.jpg 心の病気といっても、いろいろあります。
 まずは、心身症があります。胃潰瘍は体の病気ですが、ストレスといった心の病が原因で症状が出ることを、心身症といいます。心療内科では、体だけではなく、心のケアも同時に行なうといった治療を行っています。
 次に、心の悩みから体に症状が出てしまうのが神経症になります。軽度のパニック障害や強迫性障害がこれにあたります。
 気分が落ち込んで、意欲が出ないといった病気が、うつ病です。脳神経細胞の情報伝達が悪いと、うつ病になるという説があり、この連絡を良くする薬が、抗うつ薬といわれています。
 統合失調症は心の病気ですが、脳の機能障害が起こって、妄想や幻覚を引き起こすことが多いです。これについても、よい薬が出てきたので、きちんと飲めば一般的な社会生活が送れるようになります。
 適応障害という心の病気もあります。身近な例では、子供が学校で先生に注意されたり、いじめにあったりすることで、登校時間になると熱を出したり、お腹を壊すといった症状が出たりします。また、就職して入社してから思い描いていたイメージとは違ったり、上司に注意されたりすることから、職場に適応できずに、休職や退職をする例などが挙げられます。


ストレスが与える影響


seminar10_img_04.jpg ストレス学説を唱えたのは、ハンス・セリエという学者になります。彼は、生体に外部から様々な有害刺激を与え続けるという実験を行いました。これらの刺激に適応しようとして、生体に一定の反応が起こることがわかり、この全身におきる反応を全身適応症候群と名づけました。ストレスを引き起こす外部環境からの刺激をストレッサーと定義し、ストレッサーを受けると、副腎皮質の肥大や、胸腺リンパ節の萎縮などの症状を引き起こすといった内容です。
 もうひとつのストレス学説は、ウォルター・ブラッドフォード・キャノンの実験によるものです。彼は、猫を檻に閉じ込めて獰猛な犬に激しく吠え付かせることで、猫の体の変化を調査しました。この結果、猫の血圧があがり、脈が速くなり、筋肉の緊張、呼吸が上がるといった変化がありました。これは、血液の中でアドレナリンが放出されて交感神経が活性化する、という現象です。昔から「火事場のバカ力」という言葉がありますが、緊急時にはアドレナリンが出て普段は考えられない力が出るということです。これらの実験から、ストレスが体に影響を与えることが証明されました。
 もうひとつ、精神神経免疫学という精神状態と神経と免疫が関係しているという学問があります。これは、精神的ストレスが内分泌系や交感神経を介して末梢の免疫細胞の機能変化を誘導して、自己免疫の発症の誘因になることも明らかになっています。これを実験したのが、精神が元気なグループと、落ち込んでいる人のグループに分けて、鼻から風邪のウイルスを入れるという実験を行いました。すると、元気なグループはほとんど風邪を引かなかったのに対して、落ち込んでいるグループは、半分以上の方が風邪を引いてしまうという結果になりました。精神が病むと免疫力が落ちるという証明ですね。


心臓病に影響を与えるA型行動


seminar10_img_05.jpg 心臓病はストレスと大きな関係があります。心臓の役割は、二酸化炭素の多くなった血液を肺に送り込み、肺で二酸化炭素を酸素と交換して、再び体の中に戻します。心臓に血液を運ぶ血管の中に、コレステロールに代表される脂肪分などがたまると血管がせまく、血液が通りにくくなり、狭心症や心筋梗塞の原因となります。大きな原因として、高血圧、高コレステロール血症、喫煙の3つが上げられています。他には、糖尿病、痛風、肥満、遺伝的な体質も関係してきます。これがあると、心筋梗塞になりやすいので、「早期発見して予防しましょう」というのが定説です。
 他にも、心の危険因子があります。ストレスによるものと、A型行動パターン、これが心臓病に影響を及ぼします。
 ストレスがかかることによって、アドレナリンがたくさん発生します。それによって、血圧が上がる、脈拍が上がる、心臓がドキドキする、血管が収縮するといった変化があります。このときに、血管に細い部分があると血液が滞ることがあります。また、血液が凝固しやすい現象もあります。ボクシングやプロレスの試合中は、出血しても、自然に血が止まりやすくなります。ところが、血管の中で血が固まると、心筋梗塞の原因になったりします。
 さて、A型行動というのは、血液型のことではなく、捉えどころのない敵意、攻撃的、競争を好む、常に即効で時間が切迫している、短気である、目標を常に達成努力する、精力的で、大声で早口、動きも速いという特徴の行動パターンをさします。
 これを発見したのは、フリードマンとローゼンマンというアメリカの心臓専門医です。この二人は、アメリカのビジネスマン39歳から59歳の健康な男性3,154人を、せっかちなA型行動群とのんびりしたB型行動群で分け、その後8年半にわたって経過を調べました。すると、心筋梗塞や狭心症の虚血性心疾患の発症率が、A型行動はB型行動に比して約2.2倍と高い発症率でした。別の研究では、女性も同様の結果でした。
 以前、ベンチャービジネスの社長を対象に、A型行動パターン調査を行ったところ、100名のうち、90名がこのA型行動パターンに当てはまっていました。A型行動の方は、社会的な能力は高いのですが、無茶をしやすいという特徴があるので、そういった行動傾向のある方は、気をつけて頂きたいと思います。


年々増加傾向のうつ病


seminar10_img_06.jpg うつ病について、ざっとお話しましょう。
うつ病はもはや日本の社会問題になっており、年々増加しています。
98年以前は年間自殺者は2万人くらいで、高齢者や、難病を抱えていて将来を悲観する方が多かったのですが、それ以降は、年間3万人を超えるようになり、特に中高年男性が増えてきました。その原因としては、負債をかかえているなど経済的な問題が増えてきています。社会全体の不景気が続き、大企業の倒産やリストラなどの問題が広がってきたのが原因です。現在、うつ病の患者は数%から10%くらいといわれており、珍しい病気ではありません。誰でもかかる可能性のあることを認識頂きたいと思います。
 症状は、まずは気分が落ち込む、喜びが少なくなる、意欲がなくなる。行動の障害では、行動が遅くなる、反応が鈍くなる、重症になると引きこもって外へ出ないというケースもあります。その中で、自殺願望がある人が2割くらいいます。
 うつ病はなぜ起こるのか、まだはっきりとはわかったわけではありませんが、ひとつは几帳面、こり症、責任感強いなどの性格的な問題があります。もうひとつは、遺伝的に脳の情報伝達が悪い、というケースもあります。プラスして環境要因、経済的要因や、悩み事があるとうつになりやすい。どちらの要因かによって、治療法を変えていく必要があります。


心の健康を保つために


seminar10_img_07.jpg どんな病気でもそうですが、早期発見、早期治療が大切です。まわりの人も注意して、自分自身はもちろんのこと、友人やご家族の様子にも気を配ってあげてください。そして、自身の心の病予防には、こんなことを試してください。
 まずは、せっかちなA型行動パターンが多いな、と思う方はのんびりとしたB型行動パターンに修正してみましょう。
 行動療法という方法がありますが、ひとつの例として、望ましい行動をした場合は報酬を与える、というのがあげられます。例えば、休日はゆっくりと散歩を行ったご褒美に、おいしいランチを食べる、など自分に自分で報酬を与えるという方法です。
 逆に、A型行動パターンを取ると、自分で自分に罰を与えるという方法もあります。例えば、車の運転で信号が黄色なのに急いで渡ってしまうとします。その場合は、もう一度Uターンをして同じ信号を渡るという行動です。それを繰り返すことで、黄色信号で待つというパターンになるわけです。
 様々な心の病の要因となるストレスですが、これには、良いストレスと悪いストレスがあることも知られています。良いストレスですと、スポーツ選手の激しいトレーニングなどが挙げられます。苦しいので、ストレスにはなりますが、克服すると強くなります。ストレスは、こうした刺激にもなるので、人間が成長をするために、不可欠なものです。これを快ストレスといいます。
 ところが、快ストレスの限界を超えて、生産性がのびないところまでいくと、不快ストレスになります。このストレスの量には個人差があるので、この見極めは自分で判断して、人に押し付けないのも大切です。
 ストレス解消法には、いくつかの方法があります。
 まずは、運動があげられます。運動は、アドレナミンが消費されて楽になることがあります。激しいものでなくても、ウォーキングやストレッチなど、自分なりの運動法を見つけると良いとおもいます。
 もうひとつは、リラクゼーションです。例えば、感情を発散させる。お笑いのテレビで思い切り笑う、カラオケで感情をこめて歌うなどいかがでしょうか。自分ひとりで抱え込むよりも、誰かに話を聞いてもらうだけでもスッキリするので、相談相手を見つけるのも良いでしょう。その他に、好きな音楽を聴く、アロマテラピーなど良い香りをかぐ、瞑想などの方法もあります。
 心療内科でよく使われるのが、漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)といって、筋肉を順番に力を抜く方法です。
 筋肉をゆるめていくことで、気持ちもゆるめていくという方法です。何でもかまいませんが、自分なりのリラックス法を身につけるとよいと思います。
 最後に私がつくった川柳を紹介しましょう。
 「ストレスの害より大きい実りかな」
 これまでストレスの弊害ばかりをお伝えしましたが、ストレスがきたら成長するチャンスだと思って楽しんで頂ければよいと思います。発想をかえるだけで、少し気持ちが楽になると思います。

早稲田大学人間科学学術院・教授 野村忍氏
健康セミナー/2012年健康オープンカレッジ (野村 忍 氏)

心身医学、行動医学、臨床心理学を専門とする。 1977年 神戸大学医学部卒業。1977年 東京大学医学部第4内科にて研修。 1980年 国立療養所中野病院循環器科・厚生技官。1987年 東京大学医学部心療内科・助手。1996年 東京大学医学部心療内科・助教授。2000年 早稲田大学人間科学部・教授。2004年早稲田大学人間科学学術院・教授(現職)。 所属学会:日本心理医療諸学会連合(理事)、日本行動医学会(副理事長)、日本心身医学会(理事)、日本バイオフィードバック学会(理事長)、日本ストレス学会(理事)、日本産業ストレス学会(理事)ほか多数。主な著書に、ストレスと心臓病(弘文堂)、心療内科入門[編著](金子書房)、不安とストレス[編著](日本評論社) 、情報化時代のストレスマネジメント(日本評論社)ほか多数。

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