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健康セミナー/健康オープンカレッジ 第1回 (帯津 良一 氏)

自らの死から目を背けることなく、人生の中の生老病死というステージを深く考えながら、命のエネルギーを高めていきましょう。

4月14日、東京サロンにて「健康オープンカレッジ」が開催されました。講師には帯津氏をお招きし、西洋医学に中国医学、気孔、心理療法などを盛りこんだ「ホリスティック医学」についてお話しいただきました。熱心に耳を傾ける方、深く頷く方...参加された皆さまはどのようにお感じになったのでしょうか。


ホリスティック医学と人間の覚悟


70歳の古希を迎えた頃、そろそろ第一線を退いて...と考えていたことがあります。ホメオパシーと気功で食べていこうかなんてね。そんな時、今までやってきたホリスティック医学を継承するための基盤づくりにと誘われました。余生を静かに...という私のスケベ根性を見透かされたようにね(笑)。実は27年間ホリスティック医学を追い求めてきましたが、まだ確立できていないのです。あるとき、作家の田口ランディさんに、「ホリスティック医学は形じゃありません。場の中で、一人ひとりが生と死の物語を展開していくことです」と言われまして。これには1本とられたわけですが、その通りなのです。

同時に、これは夏目漱石が常に言っていたことですが、理想の大道を行きつくして斃れる、つまり1つのスタイルを追求することも兼ねてやっていこうと思いたちました。そこで、ホリスティック医学と取り組むために病院を移転して、誰もいない広い廊下に立ち、「あ、ここだな」、と自分の死ぬ場面がイメージできたんです。
3年ほど前でしょうか、五木寛之さんが「死ぬ前に『親鸞』を小説として書く」と宣言されました。これに彼の覚悟を感じたものですが、それからしばらくしてお会いしたら何とも肌のツヤがいいし、人間が一回りでかくなっている。「親鸞」だ!とピンときましたね。読んでみると、ものすごく文章が躍動していて、これは毎日かなりときめいているなと。死への覚悟をもって心をときめかせる。そのうえで自分の仕事にあたる。これが一番幸せですね。


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1926年にジャン・クリスチャンという思想家が「ホーリズム(holism)と進化」という著作の中で「holism」の形容詞として初めて「holistic」という造語を使いました。そもそもHolisticという言葉は、ギリシャ語のholos(全体)を語源とし、そこから派生した言葉にwhole、heal、holy、healthなどがあります。ホリスティックを意味する内容は東洋に根付いていた包括的な考え方に近いものなのです。


ガンほどミステリアスなものはない 治しと癒し


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アン・クローバーという女医さんの言葉で「ガンほどミステリアスな病気はない」という印象的なものがあります。治療の現場では予測できないことがたくさん起こりますから、ガンの治療は何をやってもいいと。これで思い出すのがアメリカの精神科医、ダヴィド・シュレベールです。ご自身が手術をお受けになって、それまでとはまったく比較にならないくらい生き生きとした人生を手にされたそうです。
ホリスティック医学は人間を体・心・命の3つに分けて考えます。体に働きかける治療法の西洋医学は、機械の修理と同じように故障を治す技術。一方、代替療法は命のエネルギーに働きかける癒しの技術。要するに、「治し」と「癒し」は役割が違いますから、これを合わせていけばいい。シュレベールが代替療法を養生法として捉え、養生、つまり代替療法をしっかりやらないと西洋医学だけでは成功しないと明言したように、アン・クローバーの「ガンの治療には何をやってもいい」というのもそういうことなのですね。


人生の旅情


「旅情」―これは異郷に生きる人の抱く旅情じゃなくて、人生の旅情。我々はあの世からやってきて、何十年か過ごし、またあの世へ帰っていく。孤独なる旅人です。そこで、養生とは旅情をかき立てて、それを周囲の人と分かち合い、共有しながら命のエネルギーを高めることじゃないか、と。誰もが心の奥にひっそりと抱いている旅情に対して、敬いあわないといけない。今の医療が殺伐としているのは、相手の旅情を敬う気持ちをぶつけていないからでしょう。修理工の医学ではなく、患者さんの命のエネルギーを高め、自分のエネルギーをぶつけないと......。まさに格闘技ですが、叩きつけて押さえ込むわけじゃない。相手と同じ高さにさーっと入って、自分よりも高く持ち上げる。医者はパワフルであると同時に、弱々しさも持っていなければならないわけです。そして、そのような力を十分に発揮するには、自分の死から目を背けてはいけないのです。


予感と直感


「直感」は医療の基本です。その場のエネルギーを高め、結果、患者さんやご家族医者みんなが癒される、というのが医療です。ベルグソンが述べていますが、内なる命が溢れているところに直感が生まれると。直感は、命のエネルギーが高まり、それが溢れるときにぱっと出てきます。また、彼いわく、直感が生まれると次の瞬間に生命の躍動が起こり、大いなる喜びに包まれる。生命の躍動とは命の場の小爆発ですから直感というのは非常に大事です。同じように、「予感」も大事。指揮者の小澤征爾さんは音楽関係の受賞をされた際に、受賞の予感があったそうです。こんな予感はドキドキ、ときめきますね。また、石原慎太郎さんは芥川賞の受賞を「大いなる希望を持って待っていた」そうです。ドキドキと大いなる希望を持ってその日を待つこと。これが命のエネルギーを高めるのに大きな役割を果たす。でも、優れた人でないとときめかないのかというと、そんなことはない。私は毎日夕方6時半になると、ときめいています。病院の食堂で私の好きなつまみと冷えたビールを前に!そう、誰にでもときめくチャンスはあるのです。


死を意識した命の輝き


ホリスティック医学は「人間を丸ごと、全体的に見る医学」といえます。物質としての体だけでなく、目に見えない心・命をも含めた人間の全体性と深く関係があります。生命を存在させている場があり、そこに私たちはあの世からやってきて生を受け、人間として生き、やがてあの世へ還って行く。ホリスティック医学は、死から目を背けることなく、命のエネルギーを高めていこうとする「場の医学」なのです。今日、皆さんがお集まりのこの場と同じ。毎日、ドキドキときめいて、命のエネルギーを高めていきましょう。

帯津 良一 氏
健康セミナー/健康オープンカレッジ 第1回 (帯津 良一 氏)

1936年生まれ。外科医。東京大学医学部卒業後、同大学病院第三外科、共立蒲原総合病院外科、都立駒込病院外科を経て1982年に帯津三敬病院を設立。西洋医学と代替療法を組み合わせたホリスティックなアプローチによるガン治療を実践。その確立を目指している。2000年には日本ホメオパシ-医学会設立。現在、会員は400名。

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