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2011年11月トリプル&ツインスターディレクター会議 講演レポート(齋藤精一郎 氏)

社会経済学者、エコノミスト齋藤精一郎氏 特別講演 「不確実性の時代は、ヒューマンなネットワークがキーワード」

不確実性の時代に突入した現代


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不確実性...。まさに、今の日本だけではなく、現在の世界を現す象徴的な言葉です。もう40年近くなりますが、私が翻訳しましたガルブレイスの「不確実性の時代」が到来したと、多くの人たちも言っています。今は将来が透けて見えない、我々がどこに導かれているかすら判らない。日本の場合は『3.11』千年に一度と言われる東日本大震災が起きました。ヨーロッパで2010年5月に起きたギリシャ危機は、EU各国に飛び火し、未だ収束が見えません。政策当局、経済学者、企業経営者、もちろん一般の人も将来が判らない。
2008年9月リーマン・ショック前のアメリカの失業率は5.8%。その後、ガタガタと崩れ10.1%になりました。オバマ大統領が雇用を立て直そうと、さまざまな施策を施しても9%前後。3年間かけても、アメリカの失業率は、わずか1%程しか回復しなかったのです。
また、日本経済全体を見るとこの20年間一つも成長していない。株価はバブル崩壊の前年、1989年12月の最高値38,915円(日経平均株価)をピークに、現在ではその当時の1/5に近い8,000円台です。さらに、国税庁の統計によると日本の20年前のサラリーマンの平均年収は403万円でした。ところが2010年の平均年収は406万円と、その差はわずか3万円しかありません。日本経済はいつまでたっても、もたもたしている。アメリカ経済も何かおかしい。世界全体、特に先進国に『靄(もや)』が立ちこめたように、先が判らない誰にも判らない。現在はまさに「不確実性の時代」と言えます。


大震災後、変わった価値観


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アメリカの心理学者マズローの「欲求段階説」によると人間は、お腹がすいた、寒いなど「生理的欲求」や、火事が怖い、伝染病が怖い、地震が怖いなど「安心・安全の欲求」が確保されると、次は物欲に走る。きれいな洋服が着たい、おいしい物が食べたい、自動車が欲しい...。さらに物欲が満たされると、社会のために何かやりたい、人のために尽くしたい、あるいは自分のやりたかった絵を描きたい、ガーデニングしたいなど、自分自身の能力、個性を発揮したいという欲求が生まれてきます。これを「自己実現の欲求」と言います。
しかし大震災後、人間の欲求や人生の価値観は、がらりと変わってしまいました。一番大切なものは安全であり安心、基本的な生活のもとになる健康、家族や友人や地域との関係という、日本人が忘れていたものをはからずも思い返させてくれました。「健康をもう一度考え直そう」といった、基本に戻って考えさせられたのが大震災の教訓といえます。不確実性の時代の新しい価値は、「健康」「美容」「若さ」「正直さ」「絆」など、基本に立ち返ったものにあるといえます。


ヒューマンなネットワーク「HSNS」


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今、インターネット上では、ツイッターやフェイスブック、ブログなどSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の時代で、バーチャルな目に見えない関係でつながっています。オンライン上で販売できるのは、誰でも判るブランドがはっきりした画一的な商品か、汎用性のある商品でかつ価格で競争するような普及品でしょう。
しかし、本質的に人間に貴重な「健康」「若さ」に関わる商品は、会社が研究開発や品質管理をきちんと行い、社会に自信を持って供給できる商品であること。それを信頼のあるネットワークの中で、相手を特定でき、相手が目に見える、相手の声が聞こえるヒューマンな形でのビジネス展開が必要です。生きた信頼関係のあるネットワークは、SNSにH(ヒューマン)をつけた「HSNS」。ヒューマン(人間的な)で、ソーシャル(社会的な)ネットワークサービスであるべきだと思います。


原点に返った資本主義は「結果利益」


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大震災後、遡ればリーマン・ショック以降、我々が生きている経済社会、資本主義も問い直されているのかもしれません。私の尊敬する経営者である松下幸之助氏は「結果利益」という有名な言葉を残しています。「利益を求めて仕事、商売をするな。お客様にいいものを売り、いいサービスをする、それらが行われた時にはじめて利益を得る。利益というのは目標ではなく結果である」と語っています。
また、ドイツの社会経済学者であるマックス・ウェーバーは「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中で、資本主義は金儲けを支える仕組みではなく、資本主義を支えているのは倫理観。敬虔な働く労働の喜び、物をつくり、サービスをして他の人々を喜ばせる。こういった勤勉さがあるからこそ、資本主義はうまく行く。と述べています。
さらに、経済学の祖、アダム・スミスはもとは道徳学者ですが、彼も「人間はそもそも自分に課した厳しい道徳、正しいこと、美しいこと、真実を身を持って示す個人があって、その個人が一生懸命働いて利益を求めた結果が、社会全体の利益につながる」と述べています。
資本主義は金権主義や金儲けではなく、いい商品、いいサービスを提供すれば、必ず結果として利益が返ってくる。結果利益、この考え方、哲学が、原点に返った生き方です。


人類共通の価値は健康やアンチエイジング


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海外市場に目を向ければ今アジア、特にアセアンが注目されています。アセアン10カ国の人口は約5億8千万人。テレビなどの家電や自動車を所有し、勢いを持ち始めた中間層は、日本の人口と同じぐらいの1億から1億5千万人もいます。人件費は日本の10分の1から20分の1で、日本企業の多くは生産拠点を移し、日本国内では産業の空洞化が起きています。次のマーケットになる市場とにらんで欧米各国の資本も入り、さらに強くなっています。このように世界が変わった中に日本も入り込んでいて、わたしたちの生活や仕事にも関係していると考えなくてはなりません。
フォーデイズの世界戦略、アジア戦略は始まったばかりと聞いておりますが、健康やアンチエイジングにこだわった商品やサービスは世界に共通する「価値」といえます。経済用語のBCP(Business continuity plan:事業継続計画)は企業継続のために重要なプログラムですが、フォーデイズの場合は全世界の人々への「ボディ&ブレーン・コンティニュイティ・プログラム」。すなわちボディ(身体)を健康に美しく継続して、ブレーン(頭)もフレッシュにする。高齢化を迎え、健康やアンチエイジングへのBCPは、今後ますます期待できる分野といえます。人間の人生の本質に関わる健康やアンチエイジングの分野で研究開発を重ねるフォーデイズ。これからも年代や性別を超えたより良い商品を開発して、ヒューマンなネットワークを通じて、その価値を広め、不確実性の時代を突破して欲しいと思います。

社会経済学者、エコノミスト齋藤精一郎氏
2011年11月トリプル&ツインスターディレクター会議 講演レポート(齋藤精一郎 氏)

齋藤精一郎(さいとう せいいちろう)1940年東京生まれ。63年東京大学経済学部卒業後、日本銀行へ入行。72年立教大学社会学部助教授、翌年教授となり、現在に至る。専門は社会経済・経済政策・金融論。79年にガルブレイスの『不確実性の時代』(講談社文庫)を訳出し、ベストセラーとなる。主な著書に『金融動乱』(講談社)『「10年不況」脱却のシナリオ』 (集英社新書)『パワーレスエコノミー―2010年代「憂鬱の靄」とその先の「光」』(日本経済新聞出版社)他多数。

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