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2011年トリプル&ツインスターディレクター会議 講演レポート(深澤弘 氏)

野球中継の神様 深澤弘氏 特別講演 「球界スーパースターに学ぶ人生哲学」

日本プロ野球が輝いていた時代「ON全盛期」に、アナウンサーとしてニッポン放送のショーアップ・ナイターなどで1600試合を超える実況中継をされてきた深澤さん。球界のスーパースター達との親交も深い深澤さんに、彼らの人生哲学をお話しいただきました。


プロ野球選手の女房はなぜ年上が良い?


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長嶋茂雄氏(読売ジャイアンツ終身名誉監督)に聞くと、勝負師の女房は、球場から帰ってきた夫に「疲れたでしょ。さぁ、お風呂入って」ではダメで、帰るなり「何で今日は4打数ノーヒットなの。冗談じゃないわよ!」くらいの方がいいと言い、最高なのは落合博満氏(現中日ドラゴンズ監督)の夫人、9歳年上の信子さんだよと話してくれました。
この話を落合氏に伝えると、10・18決戦の逸話を教えてくれました。それは1994年、巨人と中日がペナントレース最後の1試合を残して、その試合で勝った方がセントラルリーグ優勝が決まるという球史に残る試合。落合氏はその前年導入されたばかりのフリーエージェントで中日から移籍し、長嶋監督率いる巨人の4番バッター。決戦の前日、東京の自宅からナゴヤ球場へ向かう時、「俺は長嶋さんのために巨人に来た。もし明日のゲームに負けて、長嶋さんが辞任するようなことになったら、俺もやめるからな」と、聞こえないぐらいの声でつぶやいたそうです。しかし、それを聞いた信子さんは「あんたなんて言ったの?名古屋に負けに行くの?冗談じゃないわよ。何が天下の落合よ!」と言い放って、いつもは玄関の外まで出て見送るのに、バーンと玄関を閉めて家の中に入ってしまったそうです。
翌日の決戦の試合は、落合氏のソロ本塁打などで2点を先制し、逆転されるも落合氏の適時打で勝ち越し、巨人が勝利をつかみペナントを制しました。その中継を見ながら、信子さんは涙が止まらなかったそうです。そんな奥さんが、天才落合博満氏を奮起させ、そして支えているのかも知れません。


スーパースターには、素質だけでは成れない


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長嶋茂雄氏は動物的な感を持った天才で、何もしなくても打てるスーパースターだと思われています。でも私の知る限り、これほど凄い練習をした人は多くありません。試合が終わると、ほかの選手は、シャワーを浴び、夜の街へ繰り出して行くのですが、長嶋氏はゲーム終了から15分ぐらいで、後楽園球場から家に帰ってしまう。ある日「家に来ないか」と誘われ、私を自宅の庭に通してくれました。長嶋氏は庭の片隅に置いてあったバットを取り出し、パンツ1枚になってスイングを始めたのです。試合が終わってから、わずか30分後に練習を始めたのです。フィーリングがつかめない時には、午後10時からスタートして、午前2時まで行うこともありました。その後、長嶋宅に通うことが私の日課のようになりました。
なぜそんなに急いで帰るんですか?と聞いてみました。すると「シャワーを浴びたり、風呂に入ってしまうと、身体が試合前に戻ってしまう。試合中の緊張感を持った身体で、練習をしてこそ意義がある」。って言うんです。また、なぜこんなにも練習するんですか?と聞くと「俺はただひたすらファンのみなさんに喜んでもらいたいために練習している。それが義務だろ。今日だけしか見に来られない人のために、今日打てないって言うのは失礼だよな」。本当にプロ意識の強い人だと思いました。
王貞治氏(現福岡ソフトバンクホークス取締役会長)も、張本勲氏(現野球解説者も)、落合博満氏も「俺ほど練習している人間はいない」と言います。素質のある人がプロ野球に入ってきて「スター」までは何人かは成れる。しかし、彼らのように我々の知らないところでとんでもない練習をしなければ「スーパースター」には成れないのです。


長嶋語録からは想像もつかない勝負哲学


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長嶋氏は「メークドラマ」などカタカナ語録で有名ですが、実は考え方は純和風の人なんです。陽明学者、思想家である安岡正篤の「人生に五計あり」とい言葉が大好きで、私にも教えてくれました。五計とは、生計、身計、家計、老計、死計の五つ。



【生計】生まれいづること。これだけはその人の宿命。

【身計】身を立てること。男で言えばどう生きるか責任を感じなければいけない時。

【家計】家庭も持って家族を養うこと。責任を負いそれだけに働きがいがある世代。

【老計】老いてなお世間の役に立つ。しかし邪魔になってはいけない。後進に道を譲る。

【死計】死は避けることができない。俺の人生もまあまあかなと思えるぐらいがいい。


もう一つの大好きな言葉は「四耐」。四耐とは、冷に耐え、苦に耐え、閑に耐え、煩に耐えること。世の冷たさに耐え、厳しさに耐え、時と心の虚しさに耐え、忙しさに耐える。「根底で四耐に耐えながら、最高のモノを人間は求めなければならない。そのために自分のできることすべてをやる。それに伴って出てくる結果は仕方がない」。これが長嶋茂雄氏の勝負に対する考え方です。これに対して野村克也氏(現プロ野球解説者)は「勝負の世界は結果がすべて」と言う。いずれにせよ、一つの世界でスーパースターとして、自分を確立するには絶対何か自分の哲学を持っているのです。


プロ野球新人研修会での期待の2人


今年も日本プロ野球組織コミッショナーが開催する新人研修会で講師を務めて参りました。話し方と、インタビューへの対応をレクチャーした後、例年のようにインタビューの練習を行いました。
まずは、斎藤佑樹投手(日本ハムファイターズ)。
キャンプが終わって自信になったことはどういうこと?
「まだ自信なんて生まれてきません。多くのプロの先輩と一緒に、しかも無事にやれてそれだけは良かったと思っています」
今年の日本プロ野球のスローガンは「覚悟」だけれど斎藤くんの覚悟は?
「プロなので24時間すべてをプロ野球のためについやす覚悟です」
これだけの立派な受け答えができる新人はあまりいません。彼は人の気持ちを和らげる雰囲気を持っていて、これが人気の源だなと思いました。
もう一人は、澤村拓一投手(読売ジャイアンツ)。顔が個性的でちょっと警戒しましたが、たかがインタビューの練習なのに、実に誠実に受け答えするんです。今年の2人がこれまでで最高でした。
私は、彼らがこれからどのようなプロ野球生活を送るか、スーパースターなれるか、注目して見ていこうと思います。

新潟県民エフエム放送東京支社長、アナウンサー、スポーツコメンテーター深澤 弘氏
2011年トリプル&ツインスターディレクター会議 講演レポート(深澤弘 氏)

深澤 弘 (ふかさわ ひろし) 1936年川崎市生まれ。早稲田大学卒業後、東北放送にアナウンサーとして入社し、1964年ニッポン放送へ移籍。1990年代にかけて1600試合を超える実況を担当し、プロ野球中継では右にでるものがいない"野球中継の神様"といわれる。長嶋茂雄氏、落合博満氏、原辰徳氏等と親交が深くプロ野球の表も裏も知り尽くしている。著書には「背番号「3」甦る栄光―わが友長嶋茂雄」などがある。日本プロ野球組織 (NPB) 新人研修会講師。

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